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私の声に、カウンターから紀ちゃんが顔を出した。
「あら、カズ君おはよう。里奈、彼がさっき話したホールのカズ君。カズ君、里奈よ、ホール担当してもらうからよろしくね」
カズ君は、あぁと納得したように小さくつぶやいてから、まじまじと私を見つめた。
「本物か…」
「え?」
「ごめん。久々に見たから」
真顔のままカズ君は鞄をテーブル席に置いた。
「ちょっとカズ君!女に本物も偽物もないわよッ失礼しちゃう!」
笑いながら、紀ちゃんは再びカウンター奥へと姿を消してしまった。
「ねぇ、ちょっと触っていい?」
思いがけないカズ君の言葉に、返事をできずにいると、カズ君が返事を待たずに私の手を取った。
「小せぇ…」
優しく、そっと包むようにカズ君は私の手を握りしめた。
カズ君の伏せたまつげが長くて、私はその時初めてカズ君が整った顔立ちだと言うことに気がついてドキドキしてしまった。
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