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しばらくそうして無言のまま、カズ君は私の手を握っていた。
どうしていいのかわからずにうつむいていると、カランカランと再び入口が鳴って、派手な2人組が入ってきた。
「おはよーカズ君!…あら、新人さん?…では…ないわね…なに、カズ君の彼女?」
手をつないだままの私たちを見て、背の高い方の彼女が訝しげに首を傾げた。
その声は野太くて嗄れたような、つまりは男の声だった。
「おはようございますミチルさんにアゲハさん。新人です。フロアじゃなくて、ホールの子」
2人に挨拶をしつつも、カズ君はまだ手をはなしてはくれない。
「はじめまして、里奈です」
私が頭を下げると、アゲハさんらしい背の小さな可愛らしい彼女があぁ、と手を打った。
「ママの元カノの里奈ちゃんだ!」
なんだかとっても複雑な気持ちで頷くと、カズ君が慌てて手を離した。
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