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「ママの…元カノ…」
そう呟きながら、カズ君はテーブルに置いた鞄を肩に掛けると、カウンター奥へ入っていってしまった。
「気をつけてね、里奈ちゃん。カズ君に近づいたら妊娠するわよ」
アゲハさんが冗談めかして言った。
「あら、いくらカズ君でもママと穴兄弟なんてごめんだろうから平気じゃない?」
ミチルさんが、ガハハッと豪快に笑った。
私はもう、なにがなんだかわからずに、無言で布巾を握りしめてカウンターを拭くのに専念することにした。
着替えてきたカズ君がカウンター越に立っていて、私は思わずため息をつきそうになった。
ボーイの黒い制服を着たカズ君は、まるで雑誌の中のモデルのようだった。
紀ちゃんといい、カズ君といい、こんなにキラキラしてる人が身近にいることは今まで無かった。
「お酒は詳しい?」
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