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いつの間にか、隣に立っていたカズ君が私をのぞき込んで聞いた。
近い。
どうやらホントにカズ君は女の子が好きみたいだ。
私は、さりげなくカウンターを拭きながらカズ君から一歩離れた。
「あんまり…」
「そうか、まぁマニアックだけど種類はそんなにないから平気かな…ママの趣味でスコッチが多いんだけど」
差し出されたドリンクメニューに目を落としても、知っている名前がほとんどなかった。
スコッチってスコットランドで作られたウィスキーだったかな…なんて酒の席で聞いたような、曖昧な知識がぼんやりあるくらいだ。
「マニアックだろ?オカマバーってよりも、ママの酒の趣味が好きで来る常連ばっかり。夜は初めて?」
多分、夜の仕事は初めてかという質問に、頷くと、カズ君は意外そうに言った。
「可愛いのにもったいない」
私はカズ君がホストじゃないのが不思議だった。
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