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「チョコレート」
その変わった店名を見たとき私は顔をしかめて、紀ちゃんに言った。
「チョコレートバーみたい」
紀ちゃんは笑っていった。
「間違ってないわ、チョコレートバーが大好きで付けた名前だもの」
単純。
なんて思ってたけど、今ならちょっとわかる。
チョコバーみたいな紀ちゃんのお店。
そのカウンター席で、私はかつての恋人、トシと並んで座っていた。
お客さんとして同僚らしきスーツ姿の数人と一緒に来たトシと再会してしまったのはほんの数時間前。
何気ないふりをして飲んだ後、一旦店を出たトシが戻ってきて、ただならぬ空気を感じた紀ちゃんが時間と場所を与えてくれた。
とても迷惑で、正直とても助かった。
このお店にいる限り、流されたりしないですむ。
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