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「元気だった?」 「うん」 当たり障りのない会話。 どうして電話の返事をくれないのかとか、こんなお店で働いているのかとか、トシは聞いたりしなかった。 「来週日本を発つんだ。今日は送別会でさ、美人のママが居るって連れてこられたよ」 トシの手の中で、ロックグラスのウイスキーが小さく揺れて、ロックアイスがカランと鳴った。 ウイスキー界のロールスロイス。 紀ちゃんがそう言ってウイスキーが苦手な私にトワイスアップで勧めてくれたものだった。 ロックやストレートとまた違う口に含んだ瞬間から広がる華やかな香り。 今まで飲んだことがあるウイスキーは、強いアルコールと、とってつけたような香りが苦手だったのに、同じウイスキーでもこんなに違うのかと驚いた。 トシはそれを一口飲んで、話を切り出した。 「3年で帰ってくる」 ウイスキー界のロールスロイスと言われるだけに、バランスと安定感は群をぬいている。
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