5

3/19
前へ
/317ページ
次へ
紀ちゃんの腕はあのころのままで、男にしてはひょろりと細く、女にしては筋肉質でたくましい。 目を覚ます気配はなく、私はそっとお腹にある腕を下ろして、キッチンへ向かった。 アルコールのせいで喉がからからだった。 蛇口から勢いよく出る水をしばらく眺めて、コップに注ぐ。 コップに注いだ水道水を眺めると、ウイスキーのアルコール独特の揺らめきと違って、その波はひどく淡泊に見えた。 コップに注いだ水を2杯飲んだとき、ソファーの上にいる黒い物体が動いたのに驚いた。 人が、居る。 キッチンから顔を出して、再び驚いた。 カズ君だった。 ソファーの上で猫のように丸くなって、寝息をたてることなく、ボーイの制服姿のまま寝ていた。
/317ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9818人が本棚に入れています
本棚に追加