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「完全にはやめてないけどね、たまーに吸っちゃうダメね」
新聞に目を落としながら、紀ちゃんは優しく答えた。
「でも昔はかなり吸ってたじゃない。よくやめたね、大変なんでしょ?」
紀ちゃんの手が、小さく震えたような気がした。
「死ぬよりずっと楽よ」
思わず見上げた紀ちゃんの表情は穏やかで、きっと紀ちゃんが動揺したような気がしたのは気のせいだったんだろう。
そのまま紀ちゃんと並んでソファーに腰掛け、ただ何となく時が過ぎていく感じが好きだった。
時計は2時を過ぎていて、もう少ししたら出勤の準備を始めなくちゃいけない。
きっとカズ君もこのまま一緒に出勤するんだろうと、ゆったりした時の流れに心地よく微睡んだ。
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