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「じゃあ俺いったん家に帰るんで」
ベランダから戻ったカズ君が、鞄を持ってそう告げた。
「あら、タクシー呼ぶし、一緒に出ればいいじゃない」
紀ちゃんの言葉に、カズ君が照れくさそうに呟いた。
「ユウキが帰ってくるんで…」
「ああ!そうか、今日だったわね、よろしく言っといて」
「ユウキさんって、カズ君の彼女?」
私が訪ねると、カズ君は真顔で答えた。
「彼女…いや、彼氏」
「ユウキ君は元うちの店のボーイなのよ」
紀ちゃんも、さらっと説明を付け足してくれた。
「…そうなんだ…」
それだけ言うのがいっぱいだった私にカズ君が笑顔で言った。
「あ、でも俺バイセクシャルだから、里奈がその気ならいつでもー」
言いかけたカズ君の頭をこずいて、紀ちゃんがリビングから追い出す。
「早く帰ってやんなさい、遅刻しないでよ」
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