9818人が本棚に入れています
本棚に追加
紀ちゃんの言葉に返事をするように片手をあげて、カズ君は玄関の扉を閉めた。
私が引っ越して来てからこの家に客が来たのははじめてだったけれど、カズ君はとてもなじんでいて、何度か来たことがあるのかもしれないと思ったら、何でか胸が重くなった。
「さて、お茶でも飲んで一息つきましょうか」
リビングに戻ってきた紀ちゃんは、そのままキッチンに向かった。
「ダージリンでいい?」
ティーカップを取り出した紀ちゃんに
「私珈琲がいい」
と、だだをこねるように言って、私はソファーに足をあげクッションを抱え込んだ。
「まぁ我が儘なお姫様、モカとキリマンジャロしかありませんが、どちらになさいますか」
紀ちゃんは、笑いながらお揃いのマグカップを棚から取り出した。
「モカで」
紀ちゃんは、こくりと頷いてお湯を沸かし始める。
最初のコメントを投稿しよう!