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どこに行こう。
そんなことばかり考えていたら、時間なんてあっと言う間に過ぎて、閉店時間間際にはお客さんも居なくなり、ヤマってしまった。
私はカウンターに腰掛けながら、3日後に迫った紀ちゃんとのデートに思いを馳せていた。
「こらさぼり魔、洗い物終わったのか」
カズ君の言葉であわてて振り返る。
「終わりましたよーもうあがってもいいかなぁ…コンビニ行きたいし」
「コンビニ?腹減ってんならなんか作ろうか?」
「ううん、日曜日にね紀ちゃんとドライブに行くから…」
言いかけて、店の玄関の戸が開く音がしてカズ君と振り返った。
外は雨らしく、背の高い男の人が、コートの水滴をはらっている。
「いらっしゃいませ」
すかさずアゲハさんがコートを受け取りに駆け寄る。
「ごめん、もう終わりだっけ?一杯だけ飲みたいんだけど…」
声の感じからして、まだ若い感じだった。
この店には珍しいなとなんとなく眺めていたら、すっかりカウンター前に腰掛けたままで、カズ君に窘められた。
「宮原さん!久しぶりじゃないですかぁー!」
アゲハさんの太くて甲高い(ように努力している)声が響いた。
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