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目の前に座って、初めてその顔が見えた。 どきん。 心臓が鳴った。 優しげで涼しげな目元はどこか紀ちゃん…いや、紀之に似ていて、笑うとくしゃっと幼くなってとても可愛らしかった。 可愛らしいと言っても、30代前半位で私より年上には間違いなかった。 それでも、40代50代ばかりのこの店の常連にしてはかなり若い。 「あれ、新人さん?」 思わず見とれてカウンター前に立ったままの私に気がついて、宮原さんは再び顔を上げた。 今度はまっすぐ目があった。 正面から見ると、決して紀ちゃんと似ているわけではなかった。 目だけが同じなんだ。 紀ちゃんと、同じ目をしている。
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