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娘を幼稚園に迎えに行くという純ちゃんとわかれて、私は人ごみの中あてもなく歩き出した。 暮れかけた橙の空の下甘い匂いが町中に立ちこめている。 「バレンタインか…」 縁遠くなってしまったバレンタインのチョコレートを覗きに、私はデパートへと踏み込んだ。 綺麗に余所行き用に彩られめかしこんだチョコレートは、見てるだけでも楽しい。 まだ1月だと言うのに、街はすっかりバレンタインのムードに包まれていた。 日本は年がら年中イベントをやっていないと気が済まないらしい。 客足を増やすための商戦なんだろうけれど、それにのっかる日本人の多いこと。 立ち止まっているのは、私一人なんじゃないかと、周りを見渡した。 みんな、忙しそうに歩き回っている。 私だけ、置いて行かれてしまったみたいに。
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