9818人が本棚に入れています
本棚に追加
/317ページ
娘を幼稚園に迎えに行くという純ちゃんとわかれて、私は人ごみの中あてもなく歩き出した。
暮れかけた橙の空の下甘い匂いが町中に立ちこめている。
「バレンタインか…」
縁遠くなってしまったバレンタインのチョコレートを覗きに、私はデパートへと踏み込んだ。
綺麗に余所行き用に彩られめかしこんだチョコレートは、見てるだけでも楽しい。
まだ1月だと言うのに、街はすっかりバレンタインのムードに包まれていた。
日本は年がら年中イベントをやっていないと気が済まないらしい。
客足を増やすための商戦なんだろうけれど、それにのっかる日本人の多いこと。
立ち止まっているのは、私一人なんじゃないかと、周りを見渡した。
みんな、忙しそうに歩き回っている。
私だけ、置いて行かれてしまったみたいに。
最初のコメントを投稿しよう!