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なんとなく、ホワイトデーのクッキーたちを眺めていると、後ろから声をかけられた。
「何かお探しですか?」
「あ、いえ、ただ見てただけでー…」
顔を上げて、言葉を失う。
こんな時ばかり神様は意地悪だと思った。
「良かった、彼氏の代わりに義理チョコのお返しでも探してるのかと思ったよ」
宮原さんは、わざと安心したように胸をなで下ろす。
「どんな彼女ですかそれ、先ほどは…なんだかごちそうになっちゃって…」
「友人とのランチタイムを邪魔してしまったからね、あれくらい当然」
にっこり笑って宮原さんは私の横に並んで歩き出す。
「お仕事は?」
「今してるよ、お客様をご案内する大事な仕事」
そう言って宮原さんは私の方を向いた。
「ここで働いてたんですか?」
「正確には、働く、かな。明日から」
いたずらっぽく笑った宮原さんは、少年のようだった。
「じゃあ今日はお休みなんだ」
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