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「ホントにあんたって…」
笑いながら、紀ちゃんは私を抱きしめる。
同時に紀ちゃんの香りに包まれた。
「絶対幸せになりなよ」
言い聞かせるように、それはまるでおまじないのように、小さく小さく紀ちゃんは呟いた。
私は訳が分からないまま、されるがままに紀ちゃんの胸の中。
それでも、練り香水の紀ちゃんの匂いの中で、私は十分幸せだと思った。
ホールに戻るとカズ君がふくれっ面でお酒を作っていた。
「10分って言ったくせに」
時計を見ると、15分近くもたっていて、私はカズ君に誤って、ビールを2つ作ってカウンターに置いた。
「僕にも、もらえるかな」
宮原さんが、離れたカウンター席から手を上げる。
「はい、なににします?」
笑顔の宮原さんと目があって、何故だか少しだけ、後ろめたさを感じながら。
「次はカリラにしようかな」
私は笑顔でうなづいた。
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