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暫く眺めた後、俊はゆっくりと入り口へと足を運ばせる。
「ありがとう。後は、選んで買ってくるよ。翔は入るか?」
「ん?……あー、俺はいっかな」
俊に入るか、と聞かれたけど俺は断った。
……正直、聞いてくれてちょっとホッとした。
「……分かった。じゃあ、悪いけどちょっと待っていてくれないか?」
「いいぜ。りょーかいっ」
待つだけなら、いくらでも。
取っ手に手を取り、ドアを開けてゆっくりと中に入っていく俊。
いらっしゃいませーという店員の声を聞いた後、それと同時に俺はそのお店から離れるように背を向けた。
……。
それなのに。
何だか、誰かからの視線を背中にひしひしと感じて。
また、チクリと傷痕が痛んだ。
近くの椅子に座り、落ち着こうとしながらもちらり、と後ろを向く。
そして、いつにもましてその傷痕は痛んだ。
呼吸が出来ないくらいに……。
……そんな目で見んなよ。見られると、こっちが……。
……辛い……んだよ……。
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