不安な気持ち

6/8
前へ
/30ページ
次へ
暫く眺めた後、俊はゆっくりと入り口へと足を運ばせる。 「ありがとう。後は、選んで買ってくるよ。翔は入るか?」 「ん?……あー、俺はいっかな」 俊に入るか、と聞かれたけど俺は断った。 ……正直、聞いてくれてちょっとホッとした。 「……分かった。じゃあ、悪いけどちょっと待っていてくれないか?」 「いいぜ。りょーかいっ」 待つだけなら、いくらでも。 取っ手に手を取り、ドアを開けてゆっくりと中に入っていく俊。 いらっしゃいませーという店員の声を聞いた後、それと同時に俺はそのお店から離れるように背を向けた。 ……。 それなのに。 何だか、誰かからの視線を背中にひしひしと感じて。 また、チクリと傷痕が痛んだ。 近くの椅子に座り、落ち着こうとしながらもちらり、と後ろを向く。 そして、いつにもましてその傷痕は痛んだ。 呼吸が出来ないくらいに……。 ……そんな目で見んなよ。見られると、こっちが……。 ……辛い……んだよ……。 .
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加