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でも、そいつは簡単に逃げられる奴じゃなかったんだ……。
『ウガアアアァアァア!!』
草むらから出てきた、真っ暗な生き物。
……熊。
「……う、うわあぁあ!熊ー!!」
そいつは、当時俺達がちっちゃかったのもあってかなりでかかった。
巨大な爪を持ち、重そうな体を持って俺達を追いかける──。
俺達の足には、熊にかなわずだんだんと距離が縮んでいく。
──まずい!
「くそ!何とかなるのとか無いのかよー!」
さすがの俺も、この時はかなり焦っていた。
まさか、やられるんじゃないかって……。
『ガアァアァアア!!』
その凶器は、俺達と数mの差になって、更には……。
「ああ……っ!」
健太が、不運にも転んでしまった。
その瞬間、何かが俺達の上を揺らぐ。
「危ねぇ!!」
「翔くん……!!」
俺は、健太を守ろうと前に立ちふさがりかばった。
そして、俺は……。
「あぁああぁあぁああ!!!」
大きく振りかざされた、爪。
鈍い音。
左頬に、激しい痛み。
しにそうなほど。
頬の肉が、削れた様な感覚。
熊に襲われた後右目で見た、あいつの爪についていた大量の血。
左目は、襲われたせいでまぶたが閉じ、全く見えない……。
……ただ、幸い目玉は全然痛くなかった。
「……うぐ……、あ」
あまりの力の強さに、俺達は吹き飛ばされた。
倒れ込んだその拍子に、健太が下敷きになる。
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