打ち明け

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そんな母ちゃんの優しい笑顔を見て、俺はなんとも言えない感情が込み上げてきて……。 母ちゃんは、悪い事をすると、いつも叱ってくれる。 厳しい時は厳しいし、優しい時は優しい。 悪い事に値するんだから、当然叱られるだろうと思ってた。 それに、かなりきつく。 「あんたが、生きていた。それだけで……、嬉しいじゃないか。叱らないよ!」 だけど、その日の母ちゃんは違った。 小さな俺の体を優しく包んで、泣きながら抱き締めてくれた。 その温もりが、俺の感情をピークにさせ。 めったに流さない、涙を大量に流した。 「あんた、熊に勝ったようなもんだ!誇って……いいんだよ!」 「そう……なのか?」 左目からも、涙を流しているのが感じられた。 包帯が、涙を吸い込んでいたから……。 熊に襲われたのに、それでも生きていた。 それは、奇跡なんだ。 「でも、次からは……、もうそんな事をするのはやめなよ。翼が悲しむよ」 「に、にーちゃ」 「翼……」 1歳になったばかりの翼が、父ちゃんに抱き抱えられながら俺をみてそう呼んでいる。 そうだ……、こうして生きてなきゃ可愛い弟の顔も見れない、声も聞けない。 俺、なんて馬鹿な事をしたんだろうか。 「うん……。みんな……、ありがとう」 そんな中、健太も大量の涙を流していた。 「健太……、ごめんな」 「なんで謝るんだよ……っ、翔くんが僕を助けてくれたんじゃないか……」 「……だって」 そもそも、森へ行こうと言ったのは俺だ。 あんな事を言わなければ、こんな目にお互いにならなかったはずだから……。 「……ま、いーか」 涙で乾いた顔のまま笑い、おれはこう言った。        、 、 「今度からは、安全な場所で遊ぼうな!」 「……!」 健太は、涙をピタリ、と止まらせて笑みを浮かべる。 「うん!」 お互いにニッコリと笑い合い、そう誓った。 その日は、母ちゃんはずっと俺を抱き締めて離さなかった。 良かった、良かったと何度も言いながら……。 .
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