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ぬくぬくとした体に、俺の頬をすりつける。
俊は、そんな俺を優しく抱き締め返してくれて、頭を撫でてくれた。
「お前……、倒れてた俺を泣きながら、抱き締めてくれてたんだぜ」
「泣きながら……」
でも、今は違うよな……。きっと、俊は心の中では微笑みながら抱き締めてくれているみたいてまならなかった。
「……何かのメッセージだったんだろーな」
「……そうなのかもしれない」
俊は、俺から一方的に好きになっていつも自分の方から積極的に近づいていった。
恋愛については鈍感かも、と言っていたけどそんな気もしないんだけどなぁ……。
そんな俊も、今はこうやってなついてくる俺を受け止めてくれて、母親のように優しく包み込んでくれる。
家族、そして健太以外の『大切な人』に事実を伝えられて、本当に嬉しかった。
「すっきりしたぜ、心の中が」
「……それは良かったよ」
部屋の中に差し込んでくる暖かい日差しが凄く温くて。
昔触れた、雨よりも幸せな気分だった。
「我慢をしてはいけない、その意味は分かるだろ?」
「……ああ」
「どうしても耐えられなかったら、こうして話せば良い。俺以外に聞かれた時にもな」
「雪斗と零士、か……」
そういや、二人は初めて学校で会った時この左の傷痕について何にも聞いてこなかったよな……。
「よほどの事が無い限り、顔に傷痕は付かないから……。気を察して何も言わないんだろう」
「……」
小学校、中学校と上がっていく中で言葉責めされる事が多かったけど、健太が支えてくれたおかげで乗り越えられて。
高校からは別々になってしまったけど、少なくなった。
雪斗や零士、俊以外にも聞いてこない人がいる。
それに、昔のような言葉責めではなく、逆に心配して大丈夫かと聞かれる事が多くなって。
頑張って生きてて、これまで嬉しい事はない。
何を言われようが、耐えて耐えてここまでたどり着いた。
今の俺は幸せだ。
「……」
「翔?」
「……すー……」
俊の腕の中からの心地よさがたまらなくって、また睡魔に襲われて眠ってしまう。
「……こんな体制で寝ていたら、首痛くなるぞ」
「……ぐー」
……いつしか、俺はまたいつもの癖で猫の口をしながら、ふにゃりとしながら眠ってしまっていた。
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