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その翌日。
「……それでは、また放課後グラウンドに集合!遅れるんじゃないぞ!」
キャプテンの言葉を聞いた後、素早く解散。
朝練をなんなくこなし、クラスへと戻って行く。
「おーっす!」
「あ、おはよう!」
「おはよう」
すぐに声を掛けてくれたのは、零士と雪斗。
俊の席の前に立ち、何か見ている様子だった。
俊の席は、一番後ろ、一番左端という日当たりの良い所。
何をしているのか気になり、早足でそこへ向かった。
「……おはよう」
俺が近付いたと同時に、俊が相変わらずの無表情で言う。
そんな俊が持っていたものは、何やら写真みたいだ。
「何だ、それ?」
「親戚」
聞くと、毎年里帰りしているアメリカのカリフォルニア州に住んでいるパトリシアさんの家族。
真ん中に女の子と両端にはお母さん、お父さん。
そして、もう両端にはおじいさんとおばあさん、あと大きい犬。
みんな、金髪で水色の瞳を持った白い肌をしていた。
「へぇー、すげぇな!でも、どうしてまた?」
「……この女の子メアリーちゃんっていうんだけど、もうすぐ誕生日で……。何をあげたら良いかって相談していたんだよ」
俊が指を差したその子は、長髪を持ち真っ赤なリボンを頭に付けたメアリーちゃん。
この子が、もうすぐ誕生日なのか……。
「そっか。その子、何が好きーとか言ってないのか?里帰りして、喋っている時とかさ」
「……あんまり」
「うーん」
俺は考えた。
まだ幼い女の子が、好きなプレゼント。
「……って」
ズキズキ。
また傷んだ。
また傷痕をさすり、微かに眉間にシワを寄せる。
「……翔?」
「どうしたの?」
俊と雪斗が、心配そうにこっちを見た。
零士は、目をきょとんとしている。
「ん?あ、いや大丈夫!ちょっとかゆかっただけだから気にすんな」
「……そうか」
「なら良いね」
一瞬、俊は目力を強くして俺を見た気がした。
いつもクールな目をしてるけど、それを尚更に。
俊に心配かけちゃいけないかんな。
こいつ、本当は友達の事で何かあったらすっげぇ心配するらしいし。
……心配性とか、俊意外だよな。
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