34人が本棚に入れています
本棚に追加
その夜。
眠りについた後、俺はまたあの光景を夢に見た。
『うわあああああ!』
大きな森の中で、突然あいつが現れた恐怖。
素早く俺達に襲ってきた、大きな爪。
そして──。
「あぁああぁあぁああ!!!」
背後の友達の叫び声。
倒れる自分。
森の中へと消えていくあいつ。
「……?」
が。
友達の姿が無かった。
本当は、友達は俺の下敷きになってるハズ……。
と、その時。
見覚えのある姿が、ゆっくり、ゆっくりとこっちに向かってきているのが見えた。
そして、その人は俺の隣に座り、ぐったりとした小さな俺を優しく抱き上げ。
右目で見たその瞳は、とても悲しみで一杯になっていた。
「……?」
その人は
そのまま俺を、
ぎゅっと抱き締めてくれた。
自然と、俺の右目からは涙が溢れ。
頑張って力を振り絞り、その人の横顔を見ると
俺以上の涙を流し、何も言わずただただ抱き締めてくれていた。
……あいつ、こんなに泣くやつだったっけ……。
「……!」
思わず、布団の中で俺は目を覚ます。
自分の目からは、大量の涙が溢れていて。
頬からつたってくるのが、分かった。
「……」
ごしごしと、涙を右腕で拭いて……。
でも、それでも涙が。
……あの、夢にうつっていたのは──。
.
最初のコメントを投稿しよう!