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部屋の内装は、あれだけの時間でよくここまでやったもんだと感心するほどに綺麗に整っていた。自分の部屋にはない、独特の甘くて爽やかな香りが鼻をかすめた。
長月は部屋のドアに鍵をかけると、ベッドに腰掛けた。
「じゃ、そこに座ってくれる?」
長月は自分の真正面に位置する椅子を指差した。
黙って椅子に腰を下ろす。クッションがあるためか、俺の椅子よりも柔らかい。
「さて、じゃあ祐介君……」
長月が静かに口を開く。
「まず言っておくけど、あたしが何を言おうとも驚いて声に出さないで。他の人に気付かれるとまずいから」
「えっ……? な、ちょっ、それって……」
まさか。俺が長月の裸体を見たというのになぜか態度が変だと思ってはいたが、まさか長月が、今日出会ったばかりの俺と……えっと、アレを、すると?
ハッキリ言って、俺が変な方向に思考を持っていったことを否定することはできない。なんせ、好きな子にそう言われればそう解釈せざるを得ないだろう。なんというか、男としての本能的な面で。
困惑している俺を見て、長月は意地悪く笑った。
「……はは、残念だけど祐介君の考えていることじゃないと思うよ」
さようですか。
「さて、それじゃ話を本題にうつそうか」
また元の表情に戻った長月は、俺の方をじっと見つめてくる。そして、ゆっくりと口を開いた。
「……この世界にはいろんな生物がいて、人類はその種の全てを解き明かそうとしているのは知ってるよね。だけど、実際に存在すると証明されたことは決してないのに、存在すると言われているものがあるの。実際にはいない、架空のものも多々あるんだけどね。だけど、中には本当に実在するものもある。……例えば、日本の干支について考えてみて。何か一つ、『本来ならば』存在しないっていう仲間外れがない? ……もし、実際にそれらが実在するものだとしたら、どうする?」
…………はい? 何言ってんだ?
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