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次に気が付いたときに耳に入ったのは耳障りな目覚まし時計の音だった。甲高い叫び声のような電子音は頭の中に直接響いてきて、不快なことこの上ない。だが、そうでもしないと俺は目覚められないから仕方がないのだが。
頭を上げずに手探りで目覚ましを止めようとしたが、ボタンを押してもアラームは止まらなかった。そしてふと思い出した。
そういえば、昨日は目覚ましをセットした覚えがない。じゃあこの音は――もしかして、隣の長月の部屋からのものか。まったく、なんでこんなにもうるさい目覚まし時計をセットするんだ。俺の部屋までその音が届くとは……。
脳を直接揺さぶる音が俺の部屋まで響いていたが、それよりも大きな破砕音が聞こえたかと思うと突然止まった。
……ん? なんだ今の鈍い音は? ……まあいい、せっかく目が覚めたんだから起きようか。
俺はまだ眠たい体を無理矢理動かし、居間へと降りていった。
居間には目が半分ほど閉じている父さんと、髪がやたらとゴシャゴシャになっている母さんがトーストを口にくわえて慌しく動き回っていた。
ふむ、漫画みたいでなかなか面白い構図じゃないか。でもさ、いくら仕事に遅れそうだからって四十過ぎたいい大人がそんな行動をとらないでくれ。見ているこっちが恥ずかしくなってくるから。
俺に気付いた母さんがこっちを向いた。
「あー、起きたのね。突然で悪いんだけど、今日朝から仕事があるのを忘れてたのよ。本当に申し訳ないんだけど、食パンがあるだろうから適当に朝ごはんは済ませておいてね。とりあえず長月ちゃんを起こしにいってちょうだい。ああそうだ、長月ちゃんに変なことしちゃだめよー」
最後の一言が余計だ。
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