第二話 居候と侵食されていく日常

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「……えー、気をとりなおして、お前たち、これからこのクラスに、今年から転校生が来る。もう知っているかもしれないが、華がないこのクラス唯一の女子生徒だ。仲良くしてやってくれと言う必要はないだろう。自然と皆と仲良くなれるような性格のようだしな、彼女は。だが、一つ忠告しておく。くれぐれも、変なことはするなよ? じゃあ、呼んでくるから待ってろ」  追川が出ていくと、クラス内に沈黙が流れた。そして、またもや廊下から足音が聞こえた。今度は二つ。  ドアが開かれる。皆の、唾を呑みこむ音がハッキリと聞こえた。  それにしても、なんだろう、さっきから感じるこの悪寒は。しかも、俺の悪い予感というやつはやたらと当たるのだ。 「皆さん始めまして。あたしは長月怜華といいます。この春から竜宮高校に転校してきました。よろしくお願いします!」  刹那、教室内の室温が五度は上がったんじゃないかと思うほどのむさ苦しい熱気に包まれる中、俺一人だけは体の芯からどっと疲れが出てくるのを感じた。  ――そして、俺の学校での平穏は脆くも崩れ去った。
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