第二話 居候と侵食されていく日常

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 時計は一時を指し示していた。 「それじゃあ、ホームルームだ。めんどいから連絡は省略する。適当に掲示しておくから見とけよ。それじゃ、また明日」  五十文字程度でホームルームを終わらせるなよ。早く終わるのはいいけどさ。  放課後は案の定、野郎どもがミルに殺到していた。「一緒に帰らないかい僕の麗しき長月さん」などという胡散臭い誘いをことごとく断った上で、またあいつは何を血迷ったか、「祐介君と帰るから、ごめんなさい」などとホントに申し訳なさそうに言うもんだから、行き場を失ったクラスの皆のイライラや嫉妬心のはけ口は当然のことながら俺に向くわけで……。  さらに、ミルの風貌は俺らのクラス以外にも伝わっているのか、他のクラスの連中の姿までもが現れ、殺気を漂わせた狼どもとの鬼ごっこが始まった。  クラスの可愛い女子に付き纏われて、そのせいでクラスメートたちから制裁を受ける、なんてのはよく漫画とか小説とかでもあるシチュエーションなのだが、実際はこんなもんかもしれない。精神的にも、身体的にもダメージを負うだけなのだ。勘弁してくれ。  くそ、どれもこれも陰湿ないじめに近いミルの言動のせいなどだが、あいつはあいつで逃げている俺の後を必死で追ってこようとするのだ。そこまでして俺をいじめて何がうれしいんだ、あいつは。
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