第二話 居候と侵食されていく日常

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     3  どうにかこうにか家に辿り着き、俺は崩れ落ちるように居間で横になった。よくよく考えてみれば、まだこいつが来てから学校に行くのは今日が初日なのだ。これからもこんな疲れが続くようなら――先にあるものは過労死か、それともストレスによる心身症か……。これから先どうなるのかを考えるだけで自然とため息が出てくる。  そして、その悪の権化とでも言うべき今日の事件を引き起こした張本人はというと、居間でのんびりとテレビを見ていた。  こいつを見ていると腹が立つのだが、今は何かしようとする気力さえないのだ。 「ふう、疲れた。ねえ祐介君、明日からもこんなふうに忙しくなるのかな?」  そのお前のせいで俺はぼろきれのように横になってるんだよ! ったく、もうやってらんねーから寝るかな。  俺は部屋に向かうと制服を乱雑に脱ぎ捨て、ベッドへと倒れこんだ。  くそっ。あいつのせいで俺の健全なる高校生活までもが早くも崩壊したよ。  俺は布団を頭から被った。  ……これは現実逃避ではない。単に疲れたから寝ようとしているだけだ。そう、寝られないのは……まだ周りが明るいからだ。そうに違いない。  それにしてもあの馬鹿ドラゴンはどうしてこんなにも俺の邪魔ばっかりするかな。 「え? もう寝てるの? ねー、夕飯は作らないのかな?」  突然、俺の上から声が降ってきたので驚きながら起き上がった。 「うわ、お前、いつの間に……」 「さっきからノックしてたんだけど返事がないから変だな、って思って……」 「返事がないからって、勝手に入るなよな……」 まあ、俺も他人のこといえないか。ミルが俺ん家に来てからはほとんど毎日、俺もミルの部屋に入ってるし。 「ごめん。それで、夕飯はまだなのかな?」  上目遣いで見つめてくるミル。 「……あ、あー、えーっと、だな……」  うわ、俺としたことが今少し動揺しちまったじゃねえか! いくら上目遣いでグッとくるもんがあるからといっても、こいつが人間じゃないことは嫌というほどわかっているのに……。……まあ、外見は可愛い女の子だからな。  って、雑念は捨てろ、俺。こいつは色仕掛けで俺を動かそうと思っているんだ、そうに違いない。こんなのに引っかかるな。大体この肉体は偽りのものだし、この上目遣いも演技かもしれないじゃないか。
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