第二話 居候と侵食されていく日常

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     ○  あたしは自分の部屋に戻ると、ベッドに飛び込んだ。さっきまでの祐介君の行動を思い出し、天井を見つめながらため息を吐いた。  はあ、なんであんなことしたんだろ……。  学校でとった行動を脳裏に浮かべた。わざわざ祐介君をクラスメートたちから睨まれるように行動していた。  あたしは、自分が元々いたずら好きな性格だってことは知っているけど、いくらなんでもあれはやりすぎだった。でも、それは今振り返ってみてそう思っているでのあって、学校にいたときにそう思っていたわけではない。後悔なんて全く意味がない。過ぎ去ってしまったことを変えることなどできないのだから。  だから……あたしはさっきみたいに祐介君に冷たくあしらわれても仕方がない。……いや、あの優しい祐介君だからこの程度で済んだのかもしれない。普通なら、ずっと無視され続けてもつり合わないほど酷いことをしたのだろうから。  もしかしたら、これは自分勝手な甘えなのかもしれない。祐介君とはまだ数日しか共に過ごしてはいないけど、祐介君はとても優しい心を持っている。それは本人さえもが気付かないほどに。だからあたしはそこにつけこんであんな態度をとっていたのだろう。このまま冷たくしていれば、ずっとあたしのそれを我慢して、いつかあたしの真意に気付いてくれるだろうと。  あたしはその優しさを利用して、そして自らはろくな努力もせずただ祐介君を動かして自分の望みを叶えようとする……。  そういうふうに行動していた自分が嫌になる。だけど、嫌になるというだけじゃ何も変わらない。あたしから積極的に動いていかなきゃ何も変わらない。自分の望みは自分で叶える。これが当然のはず。  悲しみだけじゃ何も生み出せない。大切なのは、それを踏まえた行動を起こすこと。  いきなり自分の行動を変えることは無理かもしれないけど、少しずつ変化させていこう。あたしは視線の先で煌々と照っている蛍光灯に向かって拳を振り上げた。      ○
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