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また寝坊してしまった。どうやら未だに春休みボケが直っていないらしい。目覚まし時計は毎日きちんとセットしているのだが、どうもアラームがなり始めると反射的に止めてしまてそのまままた寝てしまう癖がついてしまったみたいだ。
いい加減直さないと。俺は急いで学校へ行く準備をし始めた。
……ん? 隣の部屋から声が聞こえるような気がするんだが……。壁に耳を押しあてた。
「バターと……マーガリンのちが……いは文学てき観念から考えると……」
またミルの寝言か。というか、相変わらずわけがわからん。
仕方ない、起こしてやるか。
「なっ、あっ、あなたは、ザビエルッ!」
また訳のわからない寝言を叫ぶと、ミルは掛け布団をはねのけるようにして起き上がった。
「なーんだ、夢かー。危なかったー」
ここで突っ込んだら、なんか負けのような気がするのは俺だけか?
「ん? あれ、祐介君、なんであたしの部屋にいるの? あ、さてはあたしを襲おうとしてたね?」
ミルはにやりと笑いながら俺の方を見てくる。俺はため息をついた。
「俺は犯罪者じゃねえよ。それ以前に、ドラゴンだと知っていながら襲おうとするやつはいないだろ」
ミルは頬を膨らませた。
「むー、それって差別じゃない?」
「いや、差別というか、哺乳類と爬虫類という時点で既に生物学的にかなり違うと思うんだが……」
余談だが、ドラゴンは爬虫類だそうだ。そしてこの場合、差別というよりはむしろ区別だ。
まったく、なんでこんな朝っぱらからこんな会話をしなきゃならねーんだよ……。
そうこうしているうちに、もう八時になった。
「今日は普通にバスで行くからな」
「えー、面倒だなあ」
「毎日毎日飛んでいったんじゃまずいと思うんだが。第一、お前は上空から行くしか、学校へ行けないだろ。普通に学校に行く道も知っておいた方がいいと思うんだがな」
「むー、確かにそれもそうね」
どうにか説得に成功して今日はバスで行くことになった。
俺ん家から学校までは、徒歩とバスを使うと三十分弱かかる。なぜ自転車通学ではないのかというと、俺らの高校は山の上にあり、また校舎の前に『竜宮高校前』という非常に都合のいいバス停があるからだ。無論、そこで降りるのは竜宮高校の生徒だけなのだが。
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