第一話 居候の秘密

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あれから何時間経っただろうか。目の前に誰かの気配がしたので俺は目が覚めた。  どうせ親が起こしに来たのだろう。放っておいてくれ。俺は睡眠を邪魔されるのが一番嫌いなんだ。 「あのー……」 少し戸惑っているような、高めの澄んだ声。 ――誰の声? 俺は目を開けた。白くぼやけた視界がだんだんと晴れていく。そこにいたのは、――女の子だった。目鼻の整った顔に、肩ほどまであるセミロングの髪。よくよく見れば、髪と瞳は真っ黒ではなく、ちょっと赤が混じった澄んだ黒。触れば折れてしまいそうなほどに体は細く見えるが、肌の血色は良い。……それでいて、出るべきところはしっかりと出ている。 「えっ……と、誰?」 口から出てきたのはそんな言葉だった。寝起きで上手く頭が回っていない。自分のぶっきらぼうな物言いにため息がもれる。 「あっ、あたしは長月怜華といいます。えっと、今日からお世話になります!」 それを聞き、ああ、と頷く。  その直後、顔が真っ赤になるのを感じた。……落ち着いて考えれば、初対面が寝顔なんて最悪だ。 「……あの、どうして俺の部屋に?」 「長谷さんのお母さんに、長谷さんを起こすよう頼まれたんです」 「……ああ、そうですか……」  あの母親め。何考えてるんだ。多分俺が寝ているのを知っているはずだ。 「ああそうだ、俺の事は祐介でいいよ。何か堅苦しいしさ」 「はい、じゃああたしの事は気軽に長月と呼んで下さい、祐介君」  『君』って……まあいいや。 「あー、わかった」 「そういえば、祐介君とあたしって同学年なんだよね。もし同じクラスになったら、よろしくお願いします」  長月さんはペコリと頭を下げた。俺もそれに習い軽く頭を下げた。 「ああ、こちらこそ、よろしくな」  これから楽しい日々になりそうだ。
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