第一話 居候の秘密

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 俺は今自分がベッドの上で寝転がっていることを思い出し、あわてて起き上がった。部屋を見渡したが椅子以外にどこか座れるような場所もないので椅子に座るようすすめた。……まさかベッドに座るよう言うわけにもいかないし。 「……ところでさ、長月さんはどうしてまた俺ん家なんかにいそう……いや、下宿なんかする気になったんだい? 他にも寄宿制の家庭はあったんじゃない? ……俺が言うのもなんだけどさ、同学年の男子生徒の家に泊まるのって結構抵抗があるんじゃないかと思うんだが……」  俺がそう言うと長月さんは不思議そうに首をかしげた。 「え? なんで? 何か心配するようなことでもあるの?」 「……は? あ、いや、そのだな、なんと説明すればいいんだか……」  正直俺は困っていた。なんだ? ホントに長月さんは年頃の男女が一つ屋根の下で過ごすことに何の抵抗も持っていない? それはそれでなかなか嬉し……いわけじゃ決してない。というか、どうして彼女はそういったことに気をかけたりしないのか。もしかして長月さんは同年代の子が一人もいない田舎で育ったためにまったくそういったことに関心を持ったことがないとか? ……いやいやそんなことはないだろうし、あるいは……。  色々と思考を巡らせていると、長月さんは俺の様子に気がついたのか、ぱっと顔を上げると口を開いた。 「あはは、多分祐介君が考えているのとは少し違うと思うよ。それに、祐介君があたしを……襲うなんてことはないでしょ?」  軽やかに言った後長月さんは俺の方にぱっと振り向いた。  俺は長月さんが軽く『襲う』なんて単語を使ったことに多少戸惑ったが、何も気にしていないように落ち着いて長月さんの方へ顔を向けた。 「ははは、人はいろいろな面を持っているからな。今の俺と夜の俺とは違うとも限らんぞ?」  そう軽口を叩いてやると長月さんは軽く笑った。 「……ふふ、今の言葉を聞いて確信できた。祐介君はそんな変なことはしないね。……それに、祐介君がどーんなに頑張ったとしても、あたしを襲うことなんて絶対にできっこないよ」
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