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夕飯の用意ができたらしく、母さんの声が遠くから聞こえてきた。俺はゆっくりと顔を上げ、自分の顔が不自然に赤くなっていないが心配になり顔を触った。変に熱をもっているわけではなかったので俺はゆったりとした足取りで自分の部屋から出ていった。
「それじゃ、今日から長月君がうちに来た事を祝って!」
なぜかグラスを掲げる父さん。その風貌は渋いおっさんなのだが、中身までもが渋いわけではない。
というか、相変わらずハイテンションな父さんだな。
「これからよろしく、長月さん。困った事があったらいつでも相談してくださいね」
満面の笑みで答える母さん。
母さんはこれといった目立った特徴はない人なのだが、やけに天然だ。
こうやって両親を見ていつも思う。三人行えば必ず我が師ありとはよく言ったものだ。俺は絶対に両親と同じにはなりたくない。ハイテンションにも、天然にも。
夕飯を終え部屋に戻ると、俺は椅子に深く座った。現在、午後八時半。ずいぶんと長いこと居間にいたんだな。
あと一時間くらいしたら風呂に入るか。それまで何してるかな。まさか、隣の長月の部屋に行くわけにはいかない。彼女も俺と同い年だし、何より女の子だ。夜に女性の部屋に行くのは気がひけるというか、色々とまずい香りがするので。
……それじゃ、それまでは本でも読んで時間を潰すとするか。
本棚から手頃な文庫本と漫画を引き出すとベッドへとダイブした。
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