第一話 居候の秘密

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次に時計を見たとき、時刻は既に十時を示していた。 あー、ちょっと本読んでいたらすぐこれだ。そろそろ風呂に入らねば。 欠伸を噛みしめながら風呂場へと向かい、おもむろに脱衣所のドアを開けた。 「………………」  時が凍りついたかのような沈黙が流れた。  最初は驚愕、そして次に沸きあがってきたのは羞恥心。 「…………あ」 長月がいたのだ。それも、ほぼ全裸で。不幸中の幸い、といえるかどうかはわからないが、横を向いていたので『要所』はよく見えなかったが。 「えっ……! あ、あううっ」  長月も驚いている。当然だが。 驚き、呆然とした長月の声で俺は我に返った。 「す、すいません!」 慌ててドアを閉めようとドアを掴む手に力を入れる。だが、何か異変に気が付いた。 「あれ? 今……」 今一瞬だけ(ほとんど生まれたままの姿の)長月を見たとき、何か違和感があった。数秒前の記憶を掻きまわす。数秒前に目に映った映像が頭の中で再生される。 ……何か妙なものが見えなかったか? 長月は一体何を拭っていた? 俺の記憶にある長月は、腰の後ろあたりから生えたような『何か』を拭っていなかったか? 俺はドアを閉めようとする手を止めた。そして、閉じていた目をゆっくりと開けた。 相変わらず呆然と立ちつくしている長月は、確かにその腰の後ろあたりから、何か太くて赤いモノを生やしている。これはまるで―― 「し、……しっぽ?」 我ながら情けない言葉を発しながらドアを閉めた。そのドアの奥では、まだ長月が驚いた顔をしているだろう。 俺は魂が抜けたようにフラフラと部屋へと戻った。
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