1107人が本棚に入れています
本棚に追加
閑静な住宅街にあるアパートの一室の前で、二人はインターホンを押した。
インターホンの音が部屋の中から聞こえると「開いてるで~」と応えが返って来たので、二人は部屋へと入って行く。
「おっす、遥平!
悪いないきなり」
「おっ邪魔しま~す」
この部屋の主は”春日 遥平”(カスガヨウヘイ)……派手目のTシャツに一見ボロボロのジーンズ、長い金髪は頭の上でチョンマゲ風に縛られ、細い目が特徴的な生粋の関西人だ。
「ええで。
ついに由亜ちゃんもフロンティアデビューするみたいやな」
畳みの上で立て膝のまま手を挙げる遥平の部屋は『和』の一言。
畳にちゃぶ台、座布団に障子と誰がみても和室と答えるだろう。
大阪から大学に通うためここで一人暮らしをしている遥平は、大学からの共通の友人だ。
「言っとくけど、勉強のためだから!
役に立たなかったら即止めてやるんだからねっ」
下唇を吊り上げ、ふんっと首を捻る態度をとる由亜に男二人は……
(絶っ対わざとだっ!)
(か、かわえ~)
と、見事に骨抜きにされてしまう。
ただでさえ可愛らしい外見に男心をくすぐるその仕草は、もはや凶器以外の何物でもなかった。
「わ~かってるって!
遥平、早速で悪いけど由亜にフロンティア貸してやってくれ」
「お~」
押し入れの襖を開けて中からフロンティアを取り出すと、遥平は由亜に渡した。
「それを頭に被って、後はスイッチを入れればOKだ」
「ん~何か緊張するわね……変な事起きない?」
初めての事に戸惑う由亜に克也がまくし立てる。
「何だ、怖いのか?
じゃあしょうがない……止めとこうっ!」
「な……怖くないわよっ!
ば、バッカじゃないのっ!」
顔を赤く染めて怒る由亜に、克也と遥平がやられたのは言うまでもない。
「大丈夫やって!
楽な姿勢で始めや?
起きた時大変やから」
シシシっと笑う遥平に疑問の表情を浮かべるも、由亜は促された通りフロンティアを頭に装着した。
「おっと……由亜?
俺達が起動させてから一分後にスタートさせるんだぞ?
OK?」
「わ、解ったわ」
由亜の確認を取ると二人はフロンティアを起動させた。
最初のコメントを投稿しよう!