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二人が起動した姿を眺めながら、由亜はじっと待っていた。
「そろそろ一分……かな?」
たどたどしい手つきでフロンティアの起動ボタンに指をかざす。
「……。
こ、怖くなんかないし」
若干指を震えさせながら、由亜はフロンティアの起動ボタンを押した。
その瞬間、由亜は今までに体験した事が無い感覚に襲われる。
自分の心……意識の中に自分が入っていく様な、言葉では言い表せない感覚に少し恐怖を覚えた。
しかし、そんな恐怖もすぐに払拭される。
目の前に広がる真っ白な空間と、由亜に語りかける澄んだ女性の声に意識は向けられたからだ。
「「ようこそフロンティアへ。
フロンティアのプレイヤー登録を行いますか?」」
突然の声に少し驚き、とりあえず登録だろうと頷く。
「「あなたの名前を登録します。
あなたの名前を教えて下さい。」」
声に従い自分の名前を口にした。
「え、えっと由亜よ。
梨木 由亜!」
「「梨木 由亜ですね。
一度登録すると変更が出来ません。
よろしいですか?」」
由亜の前に文字が空中に浮かび上がる。
名前を言っただけなのに、漢字まで正確に映し出されていた。
「え、えぇ……いいわ!」
「「梨木 由亜をフロンティアのプレイヤーとして登録しました。
それではフロンティアをお楽しみ下さい」」
その声を最後に、真っ白な空間は大きな駅のターミナルの様な景色に変わった。
「えっ?
い、いつの間にこんなとこに……?
さっきまで遥平の部屋にいたのに……」
戸惑う由亜の後ろから、聞き慣れた声が耳に入ってくる。
「ここが、フロンティアの中さ!
もうここは現実じゃない……ゲームの中なんだぜ!」
「か、克也!?」
そこにはいつもの見慣れた克也が、見慣れない荷物を持って立っていた。
「これが……ゲームの中?
信じられない……ていうかそのまんまじゃないっ!?」
「これがバーチャルリアリティの世界さ!
俺達の生身の体は今も遥平の部屋の中……意識だけゲームの中に来たんだよ」
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