新参者

10/37
前へ
/312ページ
次へ
「プレゼント?克也が? あ、ありがと……でも何これ?」 克也が由亜に渡したのは、エメラルドグリーンの長い布の様な物だった。 「それは多機能型マフラーバックだ! 裏地にポケットがいっぱいついてるだろ? そこに物を入れると、重さも感じないで、しかもポケットの大きさ以上のもんが入れられるんだぜ!」 意気揚々と鼻高々に説明する克也に由亜は困惑したが、試しに入れてみろと由亜が持ってきていたピンクのトートを、一つのポケットに押し込め始めた。 「ちょっと!? 入る訳無いでしょ!」 と、克也を止めるが、信じられない光景が由亜の目に飛び込んできた。 押し込まれていたトートは吸い込まれる様に一つのポケットに収まり、まるで何も入っていないかの様な感覚……重さも膨らみも感じられなかった。 「は、入っちゃった……」 由亜は目をぱちくりさせながら、その一部始終をじっと見つめる。 「出したい時はポケットに手を入れれば……」 おもむろに手を入れると、今度は吐き出す様にポケットからトートが出て来た。 「ちなみにこいつは限定品だぞ! さっき列んでまで手に入れたんだからな」 鼻を高くして自慢げなポーズを取る克也の横から、今度は遥平が出て来た。 「あかんあかん! 克也はわかってへんなぁ? 女の子のプレゼント言うたら普通こうゆうもんやんけ」 そういうと遥平はポケットからタバコサイズのケースを取り出した。 「えっ、遥平もっ!?」 遥平が由亜に渡したのは、銀色に輝く蝶をモチーフにしたブレスレットだった。 「こいつは克也のんとは格がちゃうで! 何ちゅうても世界に一つの一品物やからな。 有名なクリエイターの作品なんやで!」 蝶が幾重にも連なり、所々にダイヤの様な宝石をあしらった見事な逸品だった。 「ちょっと……これ高いんじゃないの?」 「ええて!ええて! ささやかなプレゼントやんけ。 こっちの世界でしか使えへんけど、それは注目されるでぇ?」 遥平は両手を頭の後ろに組んで、ヘラヘラと笑いながらおどけてみせた。
/312ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1107人が本棚に入れています
本棚に追加