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目覚めた時はあんなに感動的に握りしめた手も、いつの間にかちょこんと膝の上。
なんだか妙に恐縮している哲平の姿に、私の本能をくすぐられた気がした。
「……じゃあ、まだ、休んでてください。僕、今から出ないといけないけど、何か欲しくなったら冷蔵庫になんでも入ってますから」
「どこに行くの?」
考えるより先に口をついた。哲平が立ち上がった瞬間、あとの1人ぼっちの自分を思うとたまらなく心細かった。
何かを察したように、哲平はまた、私の手を握る。
「仕事ですよ」
「仕事……してるの」
「こんなですけどね、一応医者なんです。でもまだ2年目。今日は夜から救急に」
「嘘……、そんな歳に見えない」
哲平は「よく言われる」、そう言って屈託なく笑った。
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