玉響

18/45
前へ
/45ページ
次へ
「哲平君?」   彼の声が聞こえて、どこかホッとしている自分がいる。きっと彼のことだから、仕事の合間にも気になったんだろう。   「いや、ちゃんと帰れたかなと思って……」   「……帰れるわよ、子どもじゃないんだから」   素直になれずに思わず悪態をついたのに、哲平は「そうだよね」と笑ってくれた。   「でも、心配だったから。あんな事があったばっかりだし……」   「会いたい」   急に胸がモヤモヤして、私はそんな言葉で哲平の話のこしをおっていた。   「いいよ」   哲平の声が、受話器のむこうで優しかった。   ―――― 誰かを愛してしまう気持ちは、どうやったって止められない。 そんなことも分かっていなかった私は傲慢で、だから、罰が当たったのだ……。  
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

308人が本棚に入れています
本棚に追加