玉響

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いい大人が、酔っ払って二人きり。 “飲みなおし”なんて方便で、ふざけて乾杯したあと、どちらから、というわけでもなく、互いの視線にすいこまれるように接近した唇が、重なった。 何かを探るような、けれど誘っているのは明らかなキス。 「いいの?素性も知れない女と。」 キスの合間に私が尋ねると、それはお互いさまでしょ、なんて、哲平は笑った。 そうなのか?私は公園に転がっていた女なのよ? すぐに頭をよぎったけれど、ゆったりとベットに押し倒された時、私はそんな色気のない言葉をしまいこんだのだった。 何も言わない。 愛撫のかたわら片手でネクタイをゆるめ、少しずつ脱いでいく彼を、やっぱり好みだなんて今さら思いながら、私はすっかり彼のペースにはまっていた。
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