玉響

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哲平が、思いの外優しかったのがいけなかった。 とても傷つきやすいものをいたわるかのように、慈しむかのように探る唇が、核心に触れないもどかしさのようで、かえって熱っぽさを増した。 閉じた目のずっと奥で、ひとかけらの冷静さが思う。 もっと乱暴に扱われていたなら、私はきっと、今までの一連の不幸の一部なのだと片づけられたのに。 彼の丁寧で優しい愛し方に、身も心も絆される。   細身の割に、しっかりとした体つきで、それは彼の言葉遣いとは裏腹に、たくましいものだった。   セックスに肌の相性というものが本当にあるなら、二人はこの上無く良いと思った。しっとりと吸いつくようで、そこからくる安堵感と刺激はなんともミスマッチで、私は次第に言いようのない欲情にかられていった。   彼も同じことを感じていたのだろうか。   お互いに足りない何かを求めあうように、貪っては果てまた貪り……私たちは爛れたような時間を過ごした。  
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