玉響

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   夜になって帰ってきた哲平は、どこか近寄りがたい空気に包まれていた。 それはまるで、何か神聖な儀式のあとのように。   「来週、アフガンにたつことになった。」   思いがけない告白に、私はかたまった。 尋ねてもいないのに、哲平は話し始めた。今思えば、誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。   「僕ね、戦地で働きたくて。いわゆる、人道支援。ずっと希望してたんだけど、今日やっと返事がきたんだ」   「……戦地?」   胸がざわついた。 一瞬何を言っているのかよく分からなかった。そんな言葉は、テレビや歴史の授業の中だけのものだと思っていたから。
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