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結局哲平が日本をたったのは、それから2週間後だった。
すべての支度が整って、最後の日、私と哲平は、広いバルコニーにでて、少しだけビールを飲みながら他愛ない話をした。
たまたま遠くの花火大会の音だけが聞こえてきて、二人で探した。
「見えないね」
「うん、残念。あっちじゃ日本のみたいにきれいな花火、きっと見られないから。花火かぁ。調べとくんだったなぁ。」
哲平の横顔は、子どもみたいに無邪気な笑顔だったけれど、そんな言葉が私にはいちいち、胸にチクリと痛かった。
浮かない顔を見せたくなくて、私はそっと部屋にもどった。
気がついて、一呼吸おいてからもどった哲平が、私を背後から抱きしめて尋ねた。
「……朋美さん、僕が居なくなると、寂しい?」
「……うん。でも私…」
続きも聞かずに、彼は私を向き直らせると唇をふさいだ。
口を開けばまたネガティブな事を言うと、わかっていたのだろう。
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