始まり

25/45
前へ
/45ページ
次へ
 「李 安城(リ・アンソン)と言います」  リーさんは名乗った。  周は名刺を差出し、丁寧にリーさんに渡した。   「周 慶明(シュウ・ケイメイ)です。よろしく」  二人は手を握った。  「一度、ゆっくり食事でもしませんか?」  周がリーさんに、提案した。  「良いのですか、私の様な人間と一緒にいて?」  リーさんが、周に尋ねた。  「何か問題が、ありますか?同胞が異国で、食事をする事に」  周はにこやかに、リーさんに言った。  「よろしくお願いします」  リーさんは再び、周に頭を下げた。  リーさんがこの国で得た、初めての友だった。  その後、周はリーさんを誘い、食事に行ったり、飲みに行ったりした。  周は、年齢が3歳下のリーさんを弟の様に扱い、リーさんは周を兄の様に敬った。  周はリーさんを気遣い、仕事を紹介してくれた。  コンピューターの扱いに優れたリーさんは、皿洗いなどでは無く、ソフト開発会社に就かせた。  また、柄の悪い友達から遠ざける為、アパートの世話までしてくれた。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1339人が本棚に入れています
本棚に追加