GOKIBURI

始まり

　勤め先の中華料理店に納品に来た酒屋に、ビールケースの置場所を、今より入口近くに置いた方が良いと、提案した時に、配達の男がリーさんを、キツく睨んだ。

　配達の人間は、一切口を利かずに、いつもの所にビールケースを積み上げた。

　立ち去る時に、リーさんを見たその視線は、まるで野良犬を見る様な眼差しだった。

　店に戻ったリーさんが、恩にその話をすると、消防法と言う法律で、入口から離して保管する事が必要だった。

　リーさんは自分の不明を感じた。

　この後、配達の男に謝罪しようとしたが、リーさんが言葉を尽くして詫びても、男は二度とリーさんの話を聞こうとしなかった。

　最後には、リーさんの存在すら無視する様になり、その男にとっては、リーさんはそこに存在する事も、許されていなかった。

　リーさんは、周の説明で今はっきりと理解できた。

　きっとあの配達の男は、訳も識らずに得意げに話す、中国人を殺したい位に、憎んだのだ。

　殺す事が出来ないから、私を視界から消したのだ。

　リーさんは、恐ろしく成っていた。

　リーさんの一言で、男はリーさんに殺意を持った。