始まり

3/45
前へ
/45ページ
次へ
 比べてみても、何もならない惨めな思いを押し殺す。  新聞をテーブルに投げ出して、タバコに火を着ける。  首を巡らせると、パチンコ店[アース]の店長が、私の後ろの席にいた。  見知らぬ男と話す店長は、緊張した様子だった。  私は聴くとは無しに、二人の会話が耳に入った。  「3台じゃあ、20しか無理だよ店長」 意味が分からない内容が聴こえた。  店長が何かの相談をしている様に感じた。  相手の男は普通なら、絶対に同席したく無いタイプの男だった。  ヤクザの特徴を5個並べたら、全部が当てはまる男だった。  ヤクザ風の男は店長と値段の交渉をしている様だった。  最終的に店長が折れた形で決着したようだ。  店長が店を出て行った。  ヤクザ風の男は、電話をしていた。  私は何かヤバイ空気を感じていた。  ヤクザ風の男は、更に誰かに電話をした。  時々聞こえる電話の声を繋げて行くと、こいつらはパチンコ関係のシノギをしている。  [アース]の店長もこいつらに絡んでいて、金を貰って何かをしている。  私は自分が今、長い人生の中のターニングポイントに出会っていた。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1339人が本棚に入れています
本棚に追加