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私は全神経を耳に集めて、後方の男の声を聴いていた。
男の声が数字を云った。
「202、205、208の3台だぞ」
男は繰り返し相手に番号を伝えて、何かを教えている。
読んでいない新聞を手にして、俺は男の声に店長の顔が浮かんだ。
背後の男が立ち上がる気配がする。
男の後を追ってみる。
駅前のロータリーに、黒のセルシオがドアを開く。
男が車に乗り込み、走り去る。
俺は去って行く車に視線を送り、見えない男の顔を見ていた。
俺はくわえ煙草で[アース]に向かった。
俺は靄の架かる頭を掻きながら、あの男の言った番号を考えていた。
絶対にパチンコ台の番号に関係する事だ。
あの男は、堅気じゃあ無い。
店長はあの男から金を貰っている。
俺は[アース]に入って、店長の姿を探した。
「勇チャン、遅いなぁ。遅刻だよ」
キャバ嬢のサエが、甘ったるい声で俺に声をかける。
俺は聞こえない振りで、店長を探した。
「エーッ!無視するの?勇チャン酷いょ」
サエが俺のジャージの裾を掴んだ。
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