始まり

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 絶対に、こんな店に飯を食いには来ない。  春来軒は、そんな店だった。  リーさんは、恐る恐るドアを押した。  恐怖映画の効果音にピッタリの音がした。  リーさんは、薄暗い店内に向かい、声を掛けた。  「すいません」  返事が無い。  「すいません」  少し、大きな声を出した。  「誰だ」  店内に無造作に積まれた、ダンボールの陰から、大きな影が現れた。  リーさんは、2歩下がった。  影はダンボールの前に、その全体を現した。  大きな男だった。  身長は楽に2メートルを越え、体重は軽くみても、55キロのリーさんの、3倍近くは有りそうに思えた。  「何の用だ」  頭上からの声は、リーさんを現実に引き戻してくれた。  「あっ、すいません、関さんはいらっしゃいますか?」  「関に、どんな用だ?」  「黄君から預かった物を取りに来ました」  リーさんは、大きな男を見上げて言った。  「黄か、あのバカたれの荷物か?」  リーさんは、大事な友人を、バカたれ呼ばわりされて、我を忘れた。  「黄君は、愚かではありません。取り消して下さい」
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