1339人が本棚に入れています
本棚に追加
絶対に、こんな店に飯を食いには来ない。
春来軒は、そんな店だった。
リーさんは、恐る恐るドアを押した。
恐怖映画の効果音にピッタリの音がした。
リーさんは、薄暗い店内に向かい、声を掛けた。
「すいません」
返事が無い。
「すいません」
少し、大きな声を出した。
「誰だ」
店内に無造作に積まれた、ダンボールの陰から、大きな影が現れた。
リーさんは、2歩下がった。
影はダンボールの前に、その全体を現した。
大きな男だった。
身長は楽に2メートルを越え、体重は軽くみても、55キロのリーさんの、3倍近くは有りそうに思えた。
「何の用だ」
頭上からの声は、リーさんを現実に引き戻してくれた。
「あっ、すいません、関さんはいらっしゃいますか?」
「関に、どんな用だ?」
「黄君から預かった物を取りに来ました」
リーさんは、大きな男を見上げて言った。
「黄か、あのバカたれの荷物か?」
リーさんは、大事な友人を、バカたれ呼ばわりされて、我を忘れた。
「黄君は、愚かではありません。取り消して下さい」
最初のコメントを投稿しよう!