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渡されたリストには、黄がリーさんに残してくれた、この国で生きる為の道具が並んでいた。
パスポート・通帳・印鑑・キャッシュカード・クレジットカード・現金。
黄が思い付く限り、リーさんに必要な物が、並んでいた。
リーさんは、自分の一部が消えてしまった事を、強く感じていた。
「李君、黄の小僧の伝言だ。良く聞け」
関が、大きな体を、リーさんに寄せて、優しく語る。
「李兄、幸せに」
リーさんは、関の大きな体に抱きつき、この1ヶ月間の逃亡生活の不安と、日本で得、そして失った弟を思い、思い切り泣いた。
関は泣きじゃくるリーさんを、優しく抱き締めて、大きな手で、痩せたリーさんの背中を、労る様に撫でていた。
関の分厚い胸は、リーさんの哀しみを、全て受け止めてくれた。
「そろそろいいか?」
関の困った声に、リーさんは慌てて、身体を離した。
「すいませんでした」
リーさんは、真っ赤な顔で、関に詫びた。
「黄の小僧は、君を本当に兄貴だと、思っていたな」
「はい、有難い事です。私は弟を、助けてやれません。情けない兄です」
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