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「……あれ?」
道すがら、見慣れない人影を見つけてエリヤは声を上げた。
ただでさえ人気のない時間帯、傘もささずにウロウロと道を行き来する──騎士風の男。
傘をささないのはエリヤも同じだが、挙動不審さが余りにも際立っている。
関わらない方が良いだろうか……と、エリヤが惑っている内に、男が先にこちらの存在に気付いてしまった。
「ああ、良かった……っ!」
あからさまにホッとした様子の声だった。
「まったく人に会えずに困っていたんだ。助かったよ」
近付いてきた男からは、ようやく人に会えたという安堵以外の他意は感じられず、エリヤも緊張の糸をとく。
カルーは他人の気配を嫌がって、腕からするりと逃げ出した。
エリヤは頭一つ分は高い男を見上げる。思ったよりも若かった。
そして身につけているもの一つ一つが、よくよく見れば上質なものだ。
(お貴族様かな…?)
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