猫と少年と雪の国

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 だとしたら随分と気さくな貴族だ。  エリヤの知る限り、こんな風に外を一人でうろつく貴族は見たことがない。  貴族では長男以外の男子は騎士団に入門することも多いと聞くが、おそらくこの男もその辺りだろう。  そうぼんやりと考えながら見ていたのをどう思ったのか、男は慌てて弁明に入る。 「ああ、怪しい者じゃないんだ。ちょっと道を尋ねたかっただけで……」  慌てふためく程、怪しく見える事があるということを理解していないようだ。  だが、エリヤはその様子を微笑ましく感じてしまったので、問題はないだろう。  男が懐から一枚の紙切れを取り出した。そしてエリヤに差し出して中身を見せる。 「工房を探している。予約をしていたのを取りにきたんだが……ここからは近いだろうか?」  紙切れは確かに、武器や防具を扱っている工房の予約票だ。  店名は、この街に来て間もないエリヤには馴染みのないものであったが、おそらく今日通った商店街にあるだろう。  だが……。 「し、知らない……の、かな?」  だんまりのエリヤの様子に、問いかける声も不安げだ。  だんまりなのは決して男のせいではない。
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