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まいった、と頭をかく男に、首を傾げて疑問を投げかけた。
「今日中に帰るつもりでここへ来たので宿をとっていないんだ。いや、そもそも余計な金は持ち合わせてなくて……」
男がどこからやってきたかまではわからない。
だがこの様子を見ると、そう近くもないようだ。
帰るには随分遅い時間だが、それでも用事さえ済めば問題なかったのだろう。
しかしそれさえも叶わないとなると、確かに困った事態だ。
随分とマヌケな騎士の様子に、エリヤは密かに笑いを噛み締める。
ここで笑ってしまっては可哀想だ。
男に助け船を出すべく、エリヤはペンをはしらせる。
カルーには呆れられるだろうし、司祭様には余計な手間をかけさせてしまうだろうが……それでもエリヤはノートに書き記した。
『聖堂なら一夜くらい宿を設けてくれると思います。一緒に行きませんか?』
しばらく男は逡巡していたが、他に手もないと判断したのだろう。
迷惑をかける、と生真面目に頭を下げて案内を頼んだ。
かくしてエリヤは、大きな拾いモノをして聖堂へ向かうことになったのである。
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